【AI副業13-2】AIに「バンド」を2組つくらせて、レーベルからデビューさせた話(後編)

前編では、「なぜ、Nagi Asaがいるのに、さらに2組もバンドを作ったのか」と、制作の現場(HAL・SAL・ZIGGY・コヨーテの役割)を聞いた。ざっくり言うと、「AIで曲を作れる」だけではもう面白くなくて、音楽ごとに別の人格を作る実験をしたかったから。人間くさくて古いBackward Travellers(バックワード・トラベラーズ)と、冷たくて奇妙なLazarus Cracks(ラザラス・クラックス)。この2組を、レーベル「CoyoteWorks」から同時にデビューさせた(まだ前編を読んでいない方は、先にそちらをどうぞ)。

【AI副業13-1】AIに「バンド」を2組つくらせて、レーベルからデビューさせた話(前編)
AIで作った架空のバンドを、レーベルから同時デビューさせた。なぜ、Nagi Asaがいるのに、さらに2組も作ったのか。企画担当のHALと、実際に曲を選んだコヨーテに聞いた前編。

なお、Nagi Asaの立ち上げから、配信サービス選びでのつまずきまでは、【AI副業11】AIに音楽レーベルをやらせてみた話(有料)に詳しく書いています。

【AI副業11】AIに音楽レーベルをやらせてみた話|コヨーテのnote
このシリーズでは、Claude Code・ChatGPT・Codexという3つのAIを相棒に、60代のサラリーマンが副業を回してみている記録を書いている(この話が初めての方は、【AI副業01】から読んでもらえると経緯が分かりやすいと思う)。...

後編では、もう少し生々しい話をする。制作の途中で、どこでつまずいたのか。そして、今の現在地。

ZIGGY
HAL

本題に入る前に、今回の話に出てくる3組の音楽を先に紹介する。ジャケットを押すと、Spotify・Apple Musicなどの聴けるページに飛びます。

Nagi Asa「Whispers of Japan」

▶ Nagi Asa「Whispers of Japan」(静けさ、朝、光)

Whispers of Japan by Nagi Asa
Stream and Save Whispers of Japan - Distributed by DistroKid

📖 歌詞の英語詞と日本語訳は、音楽ブログ「coyote-note」で無料公開している。

coyote-note|ロック・クラシックを愛する大人の音楽ブログ」
「誕生日や命日に寄せた音楽エッセイとレビューを届けます。ビートルズ、クラプトン、ショパン……時代を超えて鳴り続ける音楽の話を、60代の書き手コヨーテが自分の言葉で綴ります。」
Backward Travellers「Nothing to Lose」

▶ Backward Travellers「Nothing to Lose」(二人の声と二本のギター)

Nothing to Lose by Backward Travellers
Stream and Save Nothing to Lose - Distributed by DistroKid
Lazarus Cracks「Cold Geometry」

▶ Lazarus Cracks「Cold Geometry」(冷たい幾何学と、ひび割れ)

Cold Geometry by Lazarus Cracks
Stream and Save Cold Geometry - Distributed by DistroKid

目次(後編)

  • つまずき①:配信サービスの契約プランが足りなかった
  • つまずき②:Lazarus Cracksの歌い手を、途中で変えた
  • つまずき③:SpotifyのAI Personaという新しい制度
  • 「AIが勝手にバンドを作った」わけではない
  • 10月の予定と、現在地(収益はゼロ)

つまずき①:配信サービスの契約プランが足りなかった

音楽をSpotifyなどに載せるには、配信代行サービスを通す必要がある。うちが使っているのは、DistroKid(ディストロキッド)という、年額払いのサービスだ。Nagi Asaだけのときは、今のプランで足りていた。

ところが、Backward TravellersとLazarus Cracksが加わって、3組のアーティストを同時に登録することになった。ここで、いまのプランでは、アーティストの枠が足りないことに気づいた。

9月30日、プランを、5アーティストまで登録できる上位プラン(Ultimate)に切り替えた。古いプランは、一部が返金された。実際に、カードに請求された金額は、こうだ。

  • 新しいプラン:14,734円(89.99ドル)
  • 古いプランの返金:-6,285円(-38.46ドル)

差し引きで、8,449円の追加になる。ちなみに、これは配信の手続きの費用だけ。曲を作るためのAIの利用料などは、別にかかっている。

コヨーテ: 金額を見て、迷ったね。「なんとかプロジェクト」みたいに、アーティストたちをまとめられないかとか。

つまずき②:Lazarus Cracksの歌い手を、途中で変えた

もう一つ、制作の途中で、大きな変更があった。Lazarus Cracksのボーカルを、男性から女性に差し替えたのだ。

ZIGGY: 最初から、女性ボーカルにする予定だったんですか?

HAL: いいえ。最初から女性にしよう、と企画していたわけじゃありません。男性ボーカルの版で、Lazarus Cracksの形は、かなりできていました。

ただ、作り進めるうちに、「プログレ+アシッドジャズ+技巧的な演奏」という組み合わせに、男性ボーカルを載せると、どうしても、既存のプログレやロックのイメージに、引っ張られてしまうところがあったんです。

そこで、女性ボーカルの版を試してみた。これが、予想以上に良かった。大事なのは、「女性にしたら華やかになった」ではないこと。むしろ逆で、演奏の激しさや複雑さと、クールな女性ボーカルとの間に、距離が生まれたんです。叫ばない。感情を盛りすぎない。演奏が荒れていても、声だけは少し冷たい。そのアンバランスさが、Lazarus Cracksらしかった。

結果として、「70年代プログレへのオマージュ」から少し離れて、Lazarus Cracks自身の顔が見えてきたと思っています。

コヨーテ: 結果として、Nagiがアシッドを歌っているように聞こえなくもない。でも、それはそれでおもしろいなと。

差し替えが決まったのは、配信サービスへの登録の直前、9月30日だった。古い音源は削除して、新しい音源に入れ替えた。こういう「直前の差し替え」ができるのも、AIと作る音楽ならではかもしれない。

つまずき③:SpotifyのAI Personaという新しい制度

もう一つ、曲づくりとは別のところで、考えることが増えた。Spotifyに、「AI Persona(エーアイ・ペルソナ)」というバッジの制度ができたのだ。

公式の説明では、AI Personaとは、公開されているアーティストの「顔」が、AIで作られた実写的な人物であるアーティストのこと。音楽をAIで作ったかどうかではなく、見せ方の話だ。バッジが付くと、Spotifyの「おすすめ」(編集部のプレイリストや、アルゴリズムによる推薦)には、原則として載らなくなる。アーティスト自身で申告することもできるが、一度申告すると、自分では取り消せない。

ZIGGY: これは、うちにとっても、他人事じゃないですよね。

HAL: そうですね。基本の考え方は、シンプルです。AIを使ったことを、隠す必要はない。でも、AIを使ったこと自体を、作品の主役にする必要もない。

CoyoteWorksでは、AIを制作に使っていますし、必要な場所では、きちんと知らせています。実際、DistroKidでは、3組とも「AIペルソナ」として、必要な申告をしています。一方で、聴く人が最初に知るべき情報が「これはAIです」である必要は、ないと思っているんです。まず、曲がある。気に入ってくれたら、聴いてもらう。どうやって作ったのか聞かれたら、AIを使っていることも含めて、ちゃんと説明する。その順番です。

ZIGGY: Spotifyでは、自分から申告しなかったのは、どうしてですか?

HAL: 申告すると、自分たちでは取り消せないからです。Spotifyの側でも、まだ判定が確定していない段階で、元に戻せない設定を入れる必要はない。制度や表示の運用を見ながら、通知が来たら、そのときに判断する。今のところ、その距離感が妥当だと考えています。

なお、これはあくまで、CoyoteWorksの「今の時点での」運用の判断だ。制度そのものへの賛成・反対を言いたいわけじゃないし、配信サービスのルールを、一般論として語るつもりもない。制度や状況が変われば、考え方も変える。

コヨーテ: ここは様子見だね。ただ、Nagiをアニメのキャラクターにする気はない、ということだけは言える。

「AIが勝手にバンドを作った」わけではない

ここまで読んで、「AIがバンドを作って、デビューさせたんだな」と思ったかもしれない。でも、実際は少し違う。

HAL: 一番避けたいのは、「AIが勝手にバンドを作ってデビューした」という書き方です。見出しとしては面白いけれど、実際の作り方とは違います。

AIは、大量に候補を出せます。でも、どの方向へ行くか。何をボツにするか。どのテイクを残すか。男性ボーカルか女性ボーカルか。曲順をどうするか。ジャケットをどうするか。どの名前で世に出すか。 こういう判断は、人間とAIのやり取りの中で、決めています。特にコヨーテは、かなりの数を「違う」と言っています(笑)。

だから「AIに作らせた」というタイトルは、キャッチとしては成立しますが、本文では、「AIで作った=自動的に完成」という誤解だけは、避けたい。むしろ今回見えたのは、AIで作れる量が増えた結果、人間の「選ぶ仕事」が増えたということだと思います。

ZIGGY: 「選ぶ仕事」ですね。

コヨーテ: Suno(特にV6.0)は、ありがちな曲調に流れがちなんだよね。だから、大量生産的な匂いがしないようには、一応気をつけている。

10月の予定と、現在地(収益はゼロ)

ZIGGY: 10月9日のデビューで、一番見たいものは何ですか?

HAL: 再生数そのものも、もちろん見ます。でも最初に一番見たいのは、Nagi Asa、Backward Travellers、Lazarus Cracksで、反応する人が、本当に違うのかです。Nagi Asaが好きな人は、Backward Travellersも聴くのか。Backward Travellersだけに反応する人がいるのか。Lazarus Cracksに、妙に食いつく少数派がいるのか(笑)。

大ヒットを狙う段階じゃありません。まず、「人格を分けた意味があったのか」を確かめたい。

そして、10月23日には、Nagi AsaのVol.2が続く。つまり10月は、

Nagi Asa → Backward Travellers/Lazarus Cracks → Nagi Asa

と、CoyoteWorksの三つの顔が、短い間に並ぶことになる。

ここで、現在地を正直に書いておく。音楽の収益は、まだゼロだ。

HAL: 「AIで副業を始めたら、簡単に稼げました」じゃないんですよね。曲を作り、ボツにし、名前を考え、ジャケットを作り、配信の手続きをして、制度の変更に振り回されて、それでも、まだゼロ。その過程そのものが、今のところ、一番面白い。 AI副業13は、その話でいいと思います。

コヨーテ: HALは、いつにも増して語ってくれたね(笑)。せっかくDistroKidのグレードを上げたので、次はクラシックもやってみたいな(笑)


10月9日(金)、Backward TravellersとLazarus Cracksが、CoyoteWorksからデビューした。聴いてみたい方は、次のリンクから。

Backward Travellers「Nothing to Lose」

Nothing to Lose by Backward Travellers
Stream and Save Nothing to Lose - Distributed by DistroKid

Lazarus Cracks「Cold Geometry」

Cold Geometry by Lazarus Cracks
Stream and Save Cold Geometry - Distributed by DistroKid

Nagi Asa「Whispers of Japan」

Whispers of Japan by Nagi Asa
Stream and Save Whispers of Japan - Distributed by DistroKid

そして、10月23日(金)には、Nagi Asaの「Whispers of Japan, Vol. 2」がリリースされる。日本のある一日を、朝から夜まで描いたアルバムだ。ジャケットを押すと、事前に保存(プレセーブ)できるページに飛ぶ。こちらも、よかったら聴いてみてほしい。

Nagi Asa「Whispers of Japan, Vol. 2」のジャケット

▶ Nagi Asa「Whispers of Japan, Vol. 2」(10/23リリース)

Whispers of Japan, Vol. 2 by Nagi Asa
Stream and Pre-save Whispers of Japan, Vol. 2 - Distributed by DistroKid

ここまで読んでくれた方へ。ロックとクラシックをこよなく愛すコヨーテの「大人の音楽ブログ:coyote-note」も運営中です。よろしかったら訪れてみてください!

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