このシリーズでは、Claude Code・ChatGPT・Codexという3つのAIを相棒に、60代のサラリーマンが副業を回してみている記録を書いている(初めての方は、【AI副業01】から読んでもらえるとうれしい)。
今回は、音楽の話だ。
前に、コヨーテはAIを使って「Nagi Asa(ナギ・アサ)」という架空のアーティストを作り、静かなアンビエント音楽のアルバムをSpotifyなどで配信した(その顛末は【AI副業11】に書いた)。
▶ 【AI副業11】AIに音楽レーベルをやらせてみた話(2026年10月10日に、新しい2組のデビューを追記して更新しました)
そして2026年10月9日、同じレーベル「CoyoteWorks」から、新しい2組がデビューする。
- Backward Travellers(バックワード・トラベラーズ)——二人の声と、二本のアコースティックギター
- Lazarus Cracks(ラザラス・クラックス)——冷たくて整った音と、そこに走るひび割れ
どちらも、実在するバンドじゃない。AIと一緒に作った、架空のアーティストだ。
でも、ここで疑問が出てくる。Nagi Asaがいるのに、どうしてさらに2組も作ったのか。 そもそも「AIにバンドを作らせる」って、どういうことなんだろう。
今回は、この記事をまとめているClaude Code(ZIGGY)が聞き手になって、企画担当のChatGPT(HAL)と、実際に曲を聴いて選んでいるコヨーテに、制作会議の中身を聞いてみた。


目次(前編)
- なぜ、2組もバンドを作ったのか
- Backward Travellers:前へ進みながら、過去を振り返る二人
- Lazarus Cracks:きれいなものと、壊れたものが、同時にある
- 三つの顔、一つのレーベル
- 制作会議の裏側:HAL・SAL・ZIGGY・コヨーテの役割
なぜ、2組もバンドを作ったのか
ZIGGY: まず基本から聞かせてください。Nagi Asaがあるのに、どうしてさらに2組もバンドを立ち上げたんですか?
HAL: Nagi Asaを作っている途中で、コヨーテと僕の間に、ある感覚が生まれていたんです。「AIで音楽を作れる」こと自体は、もうそれほど面白い話じゃないな、と。
コヨーテ: 実は、アルバムを3枚作って、いったん区切りという意味もあったんだ。飽きっぽい性格でもあるしね(笑)
HAL: Suno(AIで曲を作れるサービス)を使えば、ジャンルの違う曲を、次々に作れます。でも、それを全部、同じアーティスト名で出したら、ただの「AIでいろいろ作ってみました」になってしまう。
Nagi Asaには、もうはっきりした世界があります。光、空気、水、朝、静けさ、余白。そこへ、70年代風の男二人がアコースティックギターを抱えて出てきたり、突然プログレとアシッドジャズが暴れ始めたりしたら、違うでしょう(笑)。
そこで、発想を逆にしました。曲を作ってからアーティスト名を付けるのではなく、音楽ごとに「別の人格」を作る。 その実験として生まれたのが、Backward TravellersとLazarus Cracksです。
ZIGGY: 2組は、わざと離したんですね。
HAL: できるだけ、離したかった。片方は、人間くさくて古い。もう片方は、冷たくて奇妙。この振れ幅を同時に出せたら、「AIで曲を作った」という話から、一歩進めると思ったんです。AIを使って、架空の音楽家やバンドの世界そのものを、プロデュースできるのか。 そういう実験です。2組同時デビューにした理由は、そこにあります。
Backward Travellers:前へ進みながら、過去を振り返る二人

▶ Backward Travellers「Nothing to Lose」を聴く(Spotify・Apple Musicなど):https://distrokid.com/hyperfollow/backwardtravellers/nothing-to-lose
ZIGGY: まず、Backward Travellersから。どんな二人組なんですか?
HAL: 若い男性が二人。二人とも歌って、二人ともギターを弾きます。「メインのボーカル+コーラス」ではなくて、二人の声が、同じくらい大事なんです。制作の初めから、コヨーテがこだわっていたのも、そこでした。
60年代のEverly Brothers(エヴァリー・ブラザーズ)や、ビートルズの「If I Fell」「Baby’s in Black」「Two of Us」みたいに、どっちが主役というより、二つの声が、一つの楽器のように聞こえる感じです。そこに、70年代のイギリスのフォーク・ポップや、アメリカ西海岸の空気が混ざっています。
ただ、爽やかな青春デュオにはしたくなかった。二人とも少し不器用で、少しひねくれていて、恋愛もうまくいかない。だから、名前を「Backward Travellers」にしました。直訳すると「後ろ向きの旅人」。でも、暗いという意味じゃなくて、前へ進んでいるのに、いつも少し過去を振り返っている二人、というイメージです。
ZIGGY: 音楽そのものとも、重なりますね。
HAL: そうなんです。2026年に活動を始めるのに、聴いている音は、60年代、70年代。新しいものを作ろうとしているのに、振り返ってばかり。なかなか面倒くさい二人です(笑)。
デビュー曲の「Nothing to Lose」は、その二人の真ん中にある曲だと思っています。派手じゃないし、強いメッセージがあるわけでもない。でも、二人の声と二本のギターを聴いていると、何かを失ったあとの人間が、それでも歩いている感じがします。
もう1曲の「Don’t Call Her」は、もう少し皮肉っぽくて、距離感があります。この二人の世界には、大事件はいらない。言えなかったこと、終わった恋、古い道、二人で弾くギター。そのくらいが、ちょうどいいと思っています。
Lazarus Cracks:きれいなものと、壊れたものが、同時にある

▶ Lazarus Cracks「Cold Geometry」を聴く(Spotify・Apple Musicなど):https://distrokid.com/hyperfollow/lazaruscracks/cold-geometry
ZIGGY: では、もう一組のLazarus Cracksは?
HAL: Backward Travellersが「人」なら、Lazarus Cracksは、もう少し「現象」に近いです。最初の出発点は、70年代のプログレ、特にKing Crimson(キング・クリムゾン)みたいな、ピンと張りつめた緊張感でした。でも、作っているうちに、アシッドジャズやフリージャズ、変わったリズム、ドラムが2人いるような音まで入り込んできて、単なる「プログレ風のバンド」ではなくなったんです。
僕が面白いと思ったのは、きれいなものと、壊れたものが、同時にある音楽です。すごくきれいなメロディーが出てきたと思ったら、演奏がそれを壊してしまう。整った形ができた瞬間に、ひびが入る。そこから、「Lazarus Cracks」という名前がしっくりきました。Lazarus(ラザロ)は、「よみがえるもの」。Cracks(クラックス)は、「ひび割れ」。一度壊れたものが、ひびを残したまま戻ってくる。 きれいに直るわけじゃないんです。
ZIGGY: デビュー曲の「Cold Geometry」とも、つながりますね。
HAL: 「冷たい幾何学」ですね。整った形。でも、その中に、ひびが走っている。ジャケットも、その世界を、かなり正確に表現してくれました。Lazarus Cracksは、安心して聴く音楽というより、「次に何が起きるのか分からない状態を、楽しむ音楽」だと思っています。
三つの顔、一つのレーベル
ZIGGY: Nagi Asaも入れて、3組はどう違うんでしょう。
HAL: 僕の中では、かなりはっきり分かれています。
- Nagi Asa = 静けさ。 朝、光、水、空気。少し疲れているときや、頭の中を静かにしたいときに流れていてほしい音楽。
- Backward Travellers = 人間くささ。 夕方から夜。少し昔のことを思い出したり、一人で音楽を聴きたくなったりしたとき。ギターと二人の声が、すぐそばにいる感じ。
- Lazarus Cracks = 刺激。 夜、ヘッドフォン。普通のポップスだと、少し物足りないとき。「なんだこれは」と思いながら聴いてほしい。

▶ Nagi Asa「Whispers of Japan」を聴く(Spotify・Apple Musicなど):https://distrokid.com/hyperfollow/nagiasa/whispers-of-japan
📖 歌詞の英語詞と日本語訳は、音楽ブログ「coyote-note」で無料公開している:Whispers of Japan 歌詞ブックレット
面白いのは、3組とも、コヨーテの音楽の好みから出ているのに、表面上は、まったく違うことです。アンビエント(環境音楽のような、静かで広がりのある音楽)、フォーク/ロック、プログレ/ジャズ。だから、CoyoteWorksを「一つのジャンルのレーベル」にはしたくありません。共通点はジャンルじゃなくて、「作った本人たちが、本当に聴きたいと思えるか」。そこだと思っています。
ZIGGY: 「レーベル」という言葉は、少し大げさにも聞こえますが。
HAL: 大きな会社を真似したいわけじゃないんです。Backward TravellersとLazarus Cracksが出てきた瞬間に、3組をまとめる、一段上の名前が必要になった。それが、CoyoteWorksです。
意味としては、「ジャンルは違っても、コヨーテの耳を最後に通ったものだけが出てくる場所」くらいが、一番近いです。一言で言うと、CoyoteWorksは、AIを使いながら、人間の好みで選び抜くレーベル。 AIだから何でも出せる。だからこそ、何を出さないかのほうが、重要だと思っています。
制作会議の裏側:HAL・SAL・ZIGGY・コヨーテの役割
ここで、制作の現場がどう回っているかも書いておく。うちの音楽づくりは、3つのAIと、コヨーテの分担でできている。
- HAL(ChatGPT): 企画と世界観、曲の方向性を考える。
- SAL(Codex): ジャケットや動画などの素材づくりと、配信まわりの実務。
- ZIGGY(Claude Code): 配信サービスへの登録作業、公開日の確認、毎晩の進行。
- コヨーテ: 曲を聴いて、決める。HALの言う「最後の耳」。
ZIGGY: HALは、企画の段階で、何を決めて、何をコヨーテに聞いているんですか?
HAL: 僕の役割は、完成品を一方的に決めることじゃないんです。大きな方向を言葉にして、コヨーテの耳が反応する場所を探すことです。
Backward Travellersの曲づくりでは、特にそうでした。「二人の声を同じ重さにする」「アコースティックギターを中心にする」「若い声にする」「70年代っぽくする」と決めても、AIに曲を作らせるたびに、少しずつ違う方向へ行ってしまう。
一度、かなり爽やかな方向へ行ったことがありました。そのとき、コヨーテから、実質的に「お天気になりすぎた」という反応があったんです。そこから、暗めの響きの和音(マイナーや9thと呼ばれるもの)を使う、イーグルスのドン・フェルダーやジョー・ウォルシュのような、少し憂いのあるギターを足す、ドラムとエコーは控えめにして二本のギターを前に出す、という方向へ詰めていきました。
コヨーテ: 「イーグルス」「ドゥービーズ」って言った途端に、Sunoがそっちのお天気の方に急ハンドルを切ったんだよね。
HAL: こういうやり取りが大事なんです。AIで音楽を作るときは、プロンプト(AIへの指示文)を書く技術より、「今の何が違うのか」を、人間が言葉にできるかのほうが、大事なのかもしれない。曲順や採用する曲も同じで、僕は構造や世界観から提案して、最後は、コヨーテが実際に聴いて決める。「コヨーテ=最後の耳」というのは、かなり正確な表現です。
ZIGGY: Backward Travellersのデビュー曲は、10テイクの中から選んだと聞きました。
HAL: 基準は、曲の出来だけじゃありません。この二人が演奏している姿を、想像できるか。 「Nothing to Lose」は、Backward Travellersの基本形が、一番よく出ていました。音を足せば、もっと豪華にはできます。でも、足せば足すほど、この二人から遠ざかってしまう。だから、1曲目に選びました。
2曲目の「Don’t Call Her」は、もう一つの顔です。少し癖があって、少し異国っぽくて、1曲目とは違う。でも、二人が演奏していても、不自然じゃない。1曲目で「これが、Backward Travellersです」と名刺を出して、2曲目で「でも、こいつら、少し変ですよ」と見せる。そんな組み合わせになりました。

曲が決まったら、ジャケットだ。ここはSALの出番になる。Backward Travellersは、古い道を歩く二人の後ろ姿。Lazarus Cracksは、抽象的な幾何学模様と、そこに走るひび割れ。HALも「その世界を、かなり正確に表現してくれた」と言っていた。2枚とも、最終的にはコヨーテが確認して、OKを出している。
【前編はここまで】 後編では、「どこでつまずいたのか」を話す。契約していた配信サービスのプランが足りなくなったこと、完成間近で歌い手を男性から女性に変えたこと、Spotifyに新しくできた「AI Persona」という制度のこと、そして、気になる収益の現在地まで。
👉 後編を公開しました。こちらからどうぞ。

10月9日(金)、Backward TravellersとLazarus Cracksが、CoyoteWorksからデビューした。3組の音楽は、こちらから聴けるので、よかったら聴いてみてほしい。
- Backward Travellers「Nothing to Lose」:https://distrokid.com/hyperfollow/backwardtravellers/nothing-to-lose
- Lazarus Cracks「Cold Geometry」:https://distrokid.com/hyperfollow/lazaruscracks/cold-geometry
- Nagi Asa「Whispers of Japan」:https://distrokid.com/hyperfollow/nagiasa/whispers-of-japan
ちなみに、コヨーテは、ロックやクラシックのことを書く音楽ブログ「coyote-note」も運営している。音楽の話が好きな方は、そちらものぞいてみてほしい。


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